無駄な抵抗はよせ

 歌入れの依頼をするとたまに、私の楽譜とは違う旋律で歌入れしてくる人がいる。

 音程の変更をしてくる人は皆無で、変更してくるのはいつもリズムの方だ。変更はごくわずかなのだが、リズムに関しては私はいつも変更の余地はない、という作り方をしているので、どこをどう変更してきても、申し訳ないがそれは私にとっては改悪でしかない。だから、本来の楽譜とは違う歌い方をされても元通りにしてもらうしかないのだが、面と向かって「やり直せ」というのも気が引ける。

 今の世には便利なことに音程修正ソフトというものがあって、少しぐらいの音程のずれなら、素人耳にはわからないように修正してくれるソフトがある。そしてそのソフトにはリズムを修正する機能があるものもある。

 だから私はやり直せと言う代わりに、その修正ソフトでもって本来の楽譜とは違う歌い方をしてきた歌を、本来の楽譜通りの歌に修正してしまう。そうすると私の楽譜とは違う旋律で歌入れをしてきた人も二度と同じようなことはしなくなる。

 申し訳ないが、私はその時心のなかでこう思っている。「無駄な抵抗はよせ!」

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